研究概要 |
PXドメイン(約140残基)のリガンドとしてSH3ドメインが想定されている.しかし,このPX-SH3相互作用の証明は未だ不十分である.昨年度は酵母ゲノムに存在するすべてのPXドメイン(15種のタンパク質に15個)のうち,タンパク質発現がうまくいった5種と,SH3ドメイン(25種のタンパク質に31個)のうち,タンパク質発現がうまくいった8種の相互作用の有無を総当たりで調べたが,相互作用を確認できなかった.我々の研究とは独立に,PXドメインと全長タンパク質の網羅的酵母ツーハイブリッドの論文が発表された.Vollert, C.S. & Uetz, P.Molecular and Celluar Proteomics 3,1053-1064(2004).これによるとSNX3の全長(これはほぼ単一のPXドメインである)とRvs167と呼ばれるタンパク質が相互作用する.Rvs167はSH3ドメインを含んでいる.そこで,15N標識したSNX3全長とRvs167のSH3ドメインを調製し,NMRを用いて滴定実験をおこなった.しかし,相互作用は検出できなかった.ホスファチジルイノシトール3リン酸のアナログを共存させたが,やはり相互作用は検出できなかった.したがって,Rvs167タンパク質のSH3ドメイン以外の領域(BARドメインを含む)とSNX3は相互作用する可能性がある. VPS17のPXドメインについてNative分解能2.3Åの結晶データが得られているが,分子置換で構造を解くことが難しい.そこで,SeMetを含むVPS17のPXドメインを調製してMAD測定を行ったが,位相決定はできなかった.そこで,保存されたロイシンをメチオニンに置換して,SeMetを導入したが,やはり位相決定はできなかった.現在さらに他の方法を検討中である.
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