研究課題
平成17年度はSUMO化を受けたチミンDNAグリコシラーゼ中央領域の立体構造解析に関する研究発表を行った。蛋白質のSUMO化は、転写・複製・修復といった核内現象や、細胞質-核間輸送、核内局在を制御することが知られており、近年急速に基質蛋白質の同定が進んでいる。SUMO化は被修飾蛋白質の高次構造を変化させる事により、標的因子との相互作用面を獲得し、機能変換を行う可能性が指摘されていたが、SUMO化蛋白質の調製が容易でない事からこの新規の機能変換機構は仮説にとどまっている。SUMO化の基質の一つであるDNA修飾酵素チミンDNAグリコリラーゼ(TDG)は、非SUMO化状態であると脱塩基部位(AP部位)を含むDNAに強く結合するが、SUMO化を受けるとそのDNAとの結合活性を失う。我々はSUMO-1修飾、及びSUMO-3修飾を受けたTDG中央領域(残基112-339)の立体構造をX線結晶構造解析法により決定した。SUMO-1化を受けたTDG中央領域は、TDG触媒ドメインと、そのC末端側の領域がSUMO-1に巻きついたような形状を持つSUMO含有ドメインの、2つのサブドメインを持つ。TDGとSUMO-1の主たる相互作用は、TDGのLys 330とSUMO-1のC末端Glyとの間のイソペプチド結合とTDGの残基307-314が形成するSUMO-1とのβシート形成であった。この2つの相互作用部位の間にある残基317-329はヘリックスを形成していた。他のグループから既に報告されていた大腸菌ミスマッチウラシルDNAグリコシラーゼ(MUG)とDNAの複合体の立体構造を基に、SUMO-1化TDG中央領域のAP部位を持つDNAとの複合体の構造モデルを作成した。モデルからTDGの残基317-329の作るヘリックスがDNAと立体衝突を起こしうる可能性が示唆された。これらから我々はTDGはSUMO-1化により構造変化を起こしDNAと立体障害を起こす事でTDGのDNA結合を阻害するというモデルを提唱した。
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