研究概要 |
本研究で対象とする2つの脳領域(キノコ体、中心体)のうち、本年度は前者の解析に力を注いだ。まず、キノコ体の入出力部位である「傘部」と「葉部」について、従来細かい内部構造が知られていなかったのを詳しく解析した。その結果、傘部については従来知られていなかった新しい入力部位を発見し、葉部については、従来知られていた3つの領域α/β,α'/β',γを、前二者を、それぞれ3層2節、後一者を5節に領域分けした。また葉部には縦方向の分岐と横方向の分岐があるが、層の構造は両者で相同であることを発見した。さらに、それぞれの領域と脳の他の部分とを結ぶ回路を調べ、傘部については新たに2種類、葉部については12種類の神経回路を同定した。葉部には、1)縦分岐と横分岐のそれぞれ基部同士を結ぶ回路、と2)縦分岐の先端部と脳の他の領域、横分岐の先端部と脳の他の領域を結ぶ回路があった。後者では、縦分岐と横分岐では接続されている脳領域に明確な違いがあり、これらの2つの分岐は異なる入出力信号を受けていること、すなわち機能的に大きな差異があることが示唆された。 今年度はさらに、もう1つの研究対象である中心体について、その回路を特徴的にラベルする系統のスクリーニングを行った。中心体には脳前方、脳後方正中部、脳後方側方部の3ケ所から神経細胞が投射するが、それらについて特徴的な細胞群をラベルするGAL4エンハンサートラップ系統を得ることができた。
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