研究課題
ダイニンの運動特性を詳細に調べるために、ダイナクチンなどの付随物を含まず、かつ運動活性の高い細胞質ダイニンを脳組織から精製した。これをビーズに付着させ、1分子としてのダイニンの運動特性を、光ピンセットを用いたナノメートル運動計測系で調べた。その結果、ダイニンは連続運動性を有し、8nmのステップを刻みながら微小管のマイナス端に向かって動き、最大力7pNを出すことが明らかになった。これらの挙動は微小管上の動きの方向性のみが異なるだけで、キネシン1分子の挙動と極めて似ていた。このことは、ダイニンがキネシンと分子構造が大きく異なるにもかかわらず、キネシンと同様なhand-over-handメカニズムで運動していることを示唆しており、双頭構造の頭部のそれぞれが直径15nmであることを考慮すると、双頭がオーバーラップしながら交互に前進するものと考えられる。一方、ダイナクチンのフラグメントに蛍光色素を結合させ、無負荷での1分子の運動の観察を試みたが、運動連続性は見られなかった。ダイニンは負荷をかけることによって、連続運動性を生み出している可能性が示された。この運動観察系では、ヌクレオチド状態による微小管との結合親和性の違いが明確に区別され、ADP・Pi状態でもっとも弱く、No nucleotide、ADPの順で強くなりAMPPNP状態が最も強いことがわかった。さらに、ダイニン運動発生メカニズムの鍵となる、ダイニンと微小管の相互作用を明らかにするために、ダイニンの微小管結合部位であるストークのコイル部の長さの異なる一連の組換え体を作製し、微小管に対する親和性を調べた。コイル部が短いものより、コイル部が長くcoiled-coil構造をとっているものの親和性が低いことがわかり、コイル部の構造変化により微小管との結合解離を調節する可能性が示唆された。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
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ページ: 3113-3128
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