研究課題
基盤研究(B)
アクチン滑り運動に伴うミオシン頭部の構造変化を捉えるために、急速凍結ディープエッチ・レプリカ電子顕微鏡像から対象の3次元構造を高精度で解析する手法の開発を続けてきた。再構成法の開発に並行して、蛋白質表面の凹凸を反映すると推定されるレプリカ像の表面パターンを対象蛋白質の原子モデルからのシミュレーション像と定量的に比較する構造差分検出法を開発し、機能中のアクト重メロミオシン-llの構造解析に応用した。その結果、滑り運動中のミオシン頭部は、広く信じられているATP結合型とは逆に屈曲していることが判明したが、さらに、同じ構造でありながらアクチンに対する結合角度のみが異なる粒子も見出されたことから、従来説とは大きく異なり、観察されたすべての画像を合理的に説明するクロスブリッジ構造変化の新たなモデルを構築した。一方、長いレバーアームを有し、アクチン上をプロセッシブに歩行中のミオシン-Vのアクチン結合部位の構造について同様の解析を行った。後足は硬直複合体の構造を示し先行研究の結果を支持したが、前足にはミオシン-llの場合と同様、われわれが新たに見出した構造が最も良く合致した。これはわれわれの提唱する構造変化の普遍性を如実に示唆するものである。細胞内のさまざまな分子構築中で特定の分子やサブドメインの局在部位と向きをレプリカ試料の視野内で示し、さらに生きた細胞中におけるその分子の動態を蛍光顕微鏡で追うことを可能とする高性能の顕微鏡用標識の開発を進めてきたが、そのコンストラクトをミオシン分子に直接融合し、頭部に標識を付加させることに成功した。原子間力顕微鏡でその動きの動画記録を試みたが、世界最高性能の機種でも時間/空間分解能が不足し、さらに基板への材料の吸着が弱く全体が不安定であった。上記の構造変化を直接検証するため、吸着を強め、さらに複数の分子内標識を導入して再度観察する予定である。
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