研究概要 |
本研究の目的は生体分子(生理活性種,酵素,受容体1遺伝子など)を動的に可視化することにより,画期的な生理機能解析法を開発することである。放射線被曝がなく非侵襲的で,かつ体外からの高感度検出が可能な蛍光法や核磁気共鳴法(MRI)などの分光学的手法に基づき,生体組織,細胞系,特にin vivo系を試料とした「生きている状態」における生体分子をそれぞれの作用部位において直接検出し,時々刻々の変化を画像として捉えるものである。昨年度までに,蛍光を原理とする亜鉛プローブDIPCY,MRIプローブとして亜鉛イオン選択的造影剤,遺伝子発現をモニターできるベータガラクトシダーゼMRIプローブ,長寿命蛍光プローブEu-25および臨床検査への応用が可能なロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)プローブの開発に成功した。 今年度は交付申請書の研究実施計画に記したように,近赤外領域発光型の可視化プローブの開発を行った。具体的には,FRETを蛍光特性の変化原理としたpH感受性プローブの創製に成功した。このプローブはレシオ型であり,プローブの局在,夾雑蛍光発光などの測定阻害要因を除くことができる特性を有しており,近赤外領域発光の特性と合わせて生体の可視化において理想的プローブである。 更に新たな長寿命型蛍光プローブとして,2型糖尿病に関連しているdipeptidyl peptidase4酵素の活性を測定できる蛍光ランタノイド錯体の開発にも成功した。DPP4阻害剤のスクリーニングに応用でき,医薬品開発の有用である。
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