平成17年度までの解析により、ORCのパートナーとしてテロメア結合因子であるTRF2とRAP1、中心体、核膜蛋白と関連が示唆されているSad1、機能未知のWD40モチーフを持つ蛋白質が質量分析によるプロテオミクスで明らかとなった。平成18年度はこれらのことを踏まえて、TRF2、RAP1、Sad1、HP1、WD40蛋白質とORC複合体の相互作用とその意味について、主にRNA干渉法により解析を進めた。 TRF2に関しては、国立がんセンター研究所の藤田雅俊室長との協同研究により行った。TRF2のmybドメインを介してORC1と主に相互作用していることが明らかとなった。また、ORCを中心とした複製開始複合体がテロメア領域に細胞周期依存的に形成されることが明らかとなった。さらに、RNAiによる機能阻害実験により、ORCおよびTRF2のテロメア領域への局在は、各々互いの活性に依存していること、ORCの活性がテロメア長に影響を及ぼすことが明らかとなった。 WD40蛋白質に関しては、タグを付加したORC1からの免疫沈降、ORC1特異抗体を用いた免疫沈降の両方から同定された。この蛋白質についてRNAiによる機能阻害を行ったところ、G1期が通常細胞の1.5倍ほどに増長することが明らかとなった。このことは、この因子がG1期におけるORCの機能を触媒していることを示唆するものであり、複製複合体の形成、細胞周期進行とのリンクが想定された。 HP1に関しては、HP1側から網羅的に相互作用因子の検索を行ったが、有為な結合因子としてORCは同定されなかった。しかしながら、ORCがもつBAHドメイン、あるいは、AT-hookモチーフを持つ因子が複数同定され、細胞周期や局在などに依存して特異的にORCとHP1が相互作用することが示唆された。
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