研究課題/領域番号 |
16370088
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
田賀 哲也 熊本大学, 発生医学研究センター, 教授 (40192629)
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研究分担者 |
鹿川 哲史 熊本大学, 発生医学研究センター, 助教授 (50270484)
信久 幾夫 熊本大学, 発生医学研究センター, 講師 (40332879)
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キーワード | 神経幹細胞 / 造血幹細胞 / シグナル伝達 / 細胞増殖 / 細胞分化 / Wnt / AGM領域 / HIPK2 |
研究概要 |
生体内の各器官は様々な機能的に特化した細胞が分化することにより構築される。本研究課題は細胞運命付け制御機構の解明を目的として、特に神経系と血液系に焦点を当てて、増殖分化因子からの細胞外来性シグナルと、細胞内に存在する転写調節因子シグナルの相互作用の観点から取り組み、以下のような成果を上げた。 <神経系>自己複製能をもちながら、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトへの分化能を有する神経幹細胞のin vitroでの維持にはbFGFが用いられる。神経幹細胞を増殖させるこのbFGFは一方で未分化性の維持にも寄与するが、意外にもbFGFシグナルが、ニューロン分化抑制作用をもつNotchシグナルとクロストークすることを見出した。神経幹細胞がbFGFシグナルとWntシグナルのクロストークによって増殖することや、両サイトカインのクロストークにより発現するcyclin D1が神経幹細胞のアストロサイト分化抑制作用を持つこともわかった。これらの知見は幹細胞の増殖機構と分化抑制機構を連携させるものであり、興味深い <血液系>大動脈-生殖原基-中腎(AGM)領域で起こる胎生期造血には転写因子STAT3の活性化が必須である。STAT3をリン酸化する因子としてHIPK2がある。AGM領域の分散培養では血管内皮様の細胞から血球マーカーCD45陽性の細胞を輩出させることが可能である。それらの細胞をCD45とc-Kit(stem cell factor受容体)の発現レベルで分取し、コロニーアッセイを行った結果、CD45^<low>c-Kit^+細胞がコロニー形成能を持つ造血前駆細胞であることが分かった。HIPK2を過剰発現させると、このCD45^<low>c-Kit^+細胞の割合が著しく減少したことからHIPK2はAGM領域において血管内皮細胞から造血前駆細胞への分化を抑制することが示唆された。また、コロニー形成能を持つCD45^<low>c-Kit^+細胞はHIPK2を強制発現させるとコロニー形成能を失った。
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