細胞内小胞輸送における膜融合はSNARE(SNAP receptor)によって媒介されている。SNAREはより合わせコイル構造を有する膜貫通タンパク質であり、小胞に存在するv-SNAREとターゲット膜に存在するt-SNAREに分けられる。Syntaxin18(Syn18)はt-SNAREの一種であり、小胞体膜に存在している。Syn18は他のSNARE(p31、BNIP1、Sec22b)および膜表在性タンパク質(sly1p、ZW10、RINT-1)と複合体を形成している。この複合体は、細胞周期チェックポイントタンパク質(ZW10、RINT-1)およびアポトーシス促進タンパク質(BNIP1)をサブユニットとして有しているという特徴がある。本申請研究によって以下のことが明らかとなっている。 1.Syn18複合体は間期およびM期においてその量に変動はない。M期においてZW10はRod、RINT-1はRad50と複合体を形成していることが知られているが、それらはSyn18複合体とは異なる複合体である。 2.RINT-1はZW10のN末端領域で相互作用し、ZW10をSyn18複合体へ留めておく働きをもつ。 3.ZW10はHeLa細胞では小胞体に存在するが、ある種の細胞(NRK細胞など)ではゴルジ体にも存在する。ゴルジ体局在は、ZW10が微小管モータータンパク質であるdynein-dynactinと相互作用して、微小管のマイナス端(ゴルジ体近傍に存在)へ輸送されたことを示唆する。 4.ZW10は順行輸送に関与するCOPI小胞のサブユニットと相互作用しうる。 5.BH3-onlyタンパク質であるBNIP1は小胞体膜融合を直接的に司る。
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