研究課題
基盤研究(B)
細胞の外部環境への接着とその上での運動は、細胞の増殖・分化・生存性等の制御における必須因子の一つであり、多細胞生物体の構築と維持を理解する上で非常に重要な生物学的過程である。申請者らは、細胞運動を制御する細胞内シグナル伝達と運動中の細胞における細胞骨格や細胞膜の再構成過程との統御機構を明らかにすることを目的とした研究を行ってきている。本年度までに採択された基盤研究の成果として、膜の再構成と伸展過程を制御する低分子量GTP結合性蛋白質であるArf6の活性制御が、細胞運動を基本的に制御している重要な細胞内過程の一つであることを示す証拠を提示し、作業仮説を提唱するに至った。今研究期間においては、Arf6の活性制御と細胞の接着や運動性との関係性をより明らかにすることを目的とした。その結果、Arf6に対するGAP(GTPase-activating protein)であると言われてきた蛋白質であるAMAP1やAMAP2が、Arf6に対しては単純なGAPing因子として作用するのではなく、GTP-Arf6と安定な複合体を形成すること、そのことによって細胞内、特に、形質膜においてArf6が活性化された領域にArf6機能を補助する一連の蛋白質因子をリクルートすることを明らかにした。このような性質は、AMAP1の場合は乳癌の浸潤仮足形成と浸潤活性において、AMAP2の場合はFcgamma receptor等のある種の細胞表面受容体のエンドサイトシスの初期過程において重要であることを明らかにした。Arf6の活性制御に関してさらに研究を進め、Arf6が非標準的ユビキチン化されることによって、GAPやGEF(guanine nucleotide exchange factor)からの制御から逃れること、従って、これはArf6の新しい制御様式であることを明らかにした。Arf6の非標準的ユビキチン化が細胞の運動性制御と密接に関連していることを示唆する結果を得ており、現在、この点を詳細に解析している。
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