研究概要 |
我々はこれまでに、胚様体の表層における原始内胚葉の分化を規定する転写因子として、GATAファミリーに属するGata6に注目して解析を進めてきた。本年度はまず、ES細胞はGata6の強制発現により、胚由来胚体外内胚葉細胞であるXEN細胞と同等の細胞に分化することを、これらES由来XEN様細胞を胚盤胞に注入して、XEN細胞と同様に胚体外内胚葉系譜にのみ寄与することを確認することによって証明した(論文作成中)。また、このような外来遺伝子の誘導発現を簡便に行う為のRosa-tetシステムを開発した(Masui, et al.,Nucleic Acids Res,2005)。一方、位置情報に基づき細胞分化が制御される例として、胚発生過程における栄養外胚葉分化過程を解析し、Cdx2とOct3/4の相互抑制作用を用いて、内-外の位置情報が分化運命決定因子として機能しうることを証明した(Niwa et al.,Cell,2005)。同様の分子機構は、胚様体の表層における原始内胚葉の分化においても機能していると考えられることから、Gata6の転写活性化能を干渉しうる、未分化状態特異的に発現する転写因子を探索したところ、Oct3/4のパートナー分子であるSox2がそのような機能を有することを見いだした。興味深いことに、原始内胚葉への分化に伴い発現が誘導されるSoxファミリーの転写因子Sox7はGata6と協調的に転写活性化を促進することから、Sox因子のスイッチによるfeedforward制御が、原始内胚葉の分化に関与していることが示唆された。また、Sox7単独の強制発現でもES細胞をXEN様細胞に分化誘導でき、このときGata6の発現が誘導されていたことから、従来想定していたGata6-Gata4の相互活性化に、Sox7も関与していることが想定され、現在解析を進めている。
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