研究概要 |
これまでに、ES細胞から原始内胚葉への分化は、分化抑制因子LIFの除去で誘導されることが知られている。我々は本年度において、これまでES細胞における機能が詳細には解析されていなかった2つの液性因子について、その機能解析結果を報告した。まず、Wntシグナルは、これまでにそのES細胞の未分化性維持機能が報告されていたが、実はこれがLIFによる未分化性維持を促進する協調的作用に限定されることを明らかにした(Ogawa, K.et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,2007)。また、内胚葉分化への関与が知られているActivin/Nodalシグナルは、マウスES細胞に対しては、LIF存在下では分化誘導効果を示さず、寧ろその未分化状態での増殖を促進することを明らかにした(Ogawa, K.et al.,J.Cell.Biol.,2007)。一方、これらの解析と並行して行った転写因子の機能解析においては、原始内胚葉系幹細胞であるXEN細胞に於いて、Zn-finger転写因子Gata6の発現が自己複製に必須であることを証明した(Shimosato, D.et al.,論文投稿中)。また、Sry関連転写因子Sox7が、原始内胚葉に由来する2つの細胞腫、壁側内胚葉と臓側内胚葉の分化運命決定に関与していることを強く示唆するデータを得た。この点については、今後発生過程における役割を詳細に解析することにより、原始内胚葉への分化運命決定が、さらにその系譜における最終分化形質の獲得とどのようにカップリングしているのか、追求していきたい。
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