研究概要 |
針葉樹ヒノキ科の樹木で、過去も含めた集団構造を推定し、また適応進化候補遺伝子や耐病性遺伝子を解析することにより、世代の長い生物における遺伝子進化の様相を明らかにした。1)スギ(Cryptomeria japonica)の集団内変異及びヌマスギとの種問変異を12遺伝子座で調査し、適応進化候補遺伝子3,弱有害的進化を行っている遺伝子2、を同定した。2)スギでCAPSマーカーやマイクロサテライトマーカーを使ってゲノムワイドサーベイを行い、集団間分化を推定するとともに、ウラスギ-オモテスギの分化に関与している可能性の有る適応候補遺伝子を見いだした。3)ヌマスギ(Taxidium distichum)の二亜種bald cypressとpond cypressの天然林から採集された種子由来のDNAサンプルを使い塩基配列多型を核10遺伝子座で調査し、ヌマスギでは集団が増加傾向を持つこと、2遺伝子座で二亜種間に有意な分化が見られること等を明らかにした。4)耐病性R遺伝子のホモログ(NBS-LRRタイプ)が、スギ及びヌマスギの集団において2〜4コピーに重複し、またスギ集団において非同義塩基多様度が同義塩基多様度の約3倍となっていることを明らかにし、強い自然淘汰の影響を受け多様な塩基配列を進化させていることを示した。5)ヒノキ科Thuja属では、針葉樹で良く保存されている非光依存性クロロフィル合成を行う3遺伝子のうち2個で非同義置換が高く、暗所で発芽させると黄化が起こりクロロフィル合成が行われない。これらの遺伝子は全てまだ発現されているが、Thuja属では生態的条件によってこれらの遺伝子の偽遺伝子化が進んでいると考えられる。6)集団の分断化・融合が過去にほぼ周期的に起こった集団で、連鎖不平衡量の染色体に沿った変化のパターンが一定サイズ集団の場合と大きく異なることを明らかにした。
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