研究概要 |
茂原は主に長谷部言人博士が収集し、東京大学総合博物館に保管されている資料を中心とし、そこに日本各地の遺跡から出土した古代日本犬の画像および計測値データ、さらに現生犬種の画像データなどを加えた総合的なデータベースを担当した。長谷部資料に関してはほぼ完成し、現在試用版をチェックしている。それ以外の収集した画像や数値データの掲載を現在継続している。石黒は日本各地から出土する古代犬および現生犬種のDNA分析を担当した。これに加えて、日本犬の系統を解析するために、中国の古代犬の遺伝子分析も行った。その結果、中国犬はイヌの遺伝子分類ではM20型(2本)とM2型(1本)に分類された。M2型は日本犬の基層を作る遺伝子型であり、M20型は弥生時代以降に日本に導入される遺伝子型である。これらの結果は、日本在来犬の起源が古くから中国に存在することを示していた。これは日本人の基層集団を考える上で貴重なデータである。また、非計測的形質の分析を担当する小宮は、ベルン自然誌博物館において、現生犬種4種および野生オオカミ頭蓋骨の形態小変異の調査をおこない、また、それらの前蝶形骨周辺部の形態分析をおこなった。これらは、これまで小宮が日本および中国で収集したイヌ属データに不足していたヨーロッパ系犬種と野生オオカミのデータを補足するものである。この結果を江木とともに分析し、頭蓋骨の解剖学的形態の出現頻度を比較し,集団間の相対的な関係を統計学的手法により検討した。現生犬種を含めて家犬は大きく2つの集団に分かれ,その片方に日本の遺跡犬集団のクラスターが含まれた。
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