研究概要 |
緑の革命に利用されたイネ半矮性遺伝子(sd1)には低脚烏尖(DGWG型)と十石(JKK型)由来の変異遺伝子が知られる。10種256系統の調査から、DGWG型は台湾在来品種1系統と中国産O.rufipogon2系統で見出された。アジア栽培および野生イネ62系統の塩基配列から遺伝子系譜を解析した結果、2つの変異体は異なる系譜上で起源したことが分った。さらに、DGWG型変異体は元来野生イネに保持され、栽培法の近代化後、緑の革命に利用されたと推定された。DGWG型変異体をもつ野生イネは、他の遺伝子の存在により半矮性の効果を示さないため自然集団中で維持されてきたものと考えられた。また、sd1座には、野生イネ・印度型・日本型の間で複対立遺伝子が分化していることが同質遺伝子系統の比較から判明した。sd1座近傍には、栽培と野生イネの間で最も顕著な脱粒性のQTLが存在するので、品種分化との関連をさらに解析する必要が示唆された。 1年生野生系統は低い草型をもつが、sd1領域には長桿に作用するQTLを持ち、従来報告のなかった短桿に作用するQTLが第7染色体に検出された。両領域におけるインド型・日本型品種・野生系統間において遺伝分化が生じているか、精密マッピングによって調査を進めている。 インド型・日本型品種における複対立遺伝子の分化については、既にWx遺伝子座が詳細に調査されている。Wx座は澱粉合成酵素(GBSS)をコードしており、その複対立遺伝子は胚乳の酵素(GBSS)量とアミロース含量から見出された。各複対立遺伝子のタンパク質当たりの酵素活性を比較したところ、Wxa,Wxb,Wxin間では酵素活性に差は無いが、Wxopでは低下し、wxでは酵素活性が消失していた。遺伝子系統樹の解析は、これらの各複対立遺伝子が品種群特異的に生じたことを示唆した。
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