研究概要 |
花粉壁に存在するポーレンコートに異常があり、柱頭上において花粉の吸水反応がおこらず、花粉管の発芽がおこらないシロイヌナズナの雄性不稔変異体flp1を得ている。flp1変異体にEMS処理を行い、そのM2世代において花粉の吸水反応が復帰する変異体のスクリーニングを行った。現在までに約15,000個体のスクリーニングを行ったが、目的の変異体は得られていない。アブラナ(Brassica napus)を材料にして、FLP1オルソローグの発現を抑制した形質転換アブラナを作製するためRNAiのベクターを作製した。形質転換体作成実験開始しているが、まだ得られていない。 花糸が短いために自家受粉が起こらず雄性不稔を示すシロイヌナズナの雄性不稔変異体を解析した。花粉壁構築過程を発育ステージ別に詳しく電顕で観察したところ、花粉壁合成の最初のステップであるプロバキュラ合成が起こらず、球形のスポロポレニンガがランダムに付着していることがわかった。しかし、成熟花粉には正常な花粉壁が合成されていた。原因遺伝子は、ブラシノステロイドの合成に関わるDE-ETIOLATED 2遺伝子が原因と考えられた。エキシン形成にプロバキュラが必要ないことを明らかにした。 アブラナ科植物の自家不和合性の花粉側認識物質であるSP11のうち、劣性対立遺伝子によってコードされる種類の認識特異性について解析し、SP11の特定の領域が認識特異性に重要であることを示すとともに、その変異の機構を明らかにした。種間不和合性は、多数の系統を用いた解析から、単純な質的形質ではなく量的形質であることが分かったため、QTL解析を行うための多数のDNA多型マーカーを作成した。
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