本研究では、我々が独自に単離したエキシン合成とポーレンコート合成に欠陥のあるシロイヌナズナのミュータントおよび自家不和合性を示すアブラナを用いて、花粉のエキシンとポーレンコートの合成に関与する遺伝子を明らかにするとともに、花粉の吸水シグナル、および、種間不和合性と自家不和合性に見られる花粉と柱頭の情報伝達に関与する物質の単離・同定および機構解明を行うことを目的とした。 本研究により、エキシン合成の足場となるプライムエキシン、および、エキシンの柱になるバキュラの形成が胞子体型に支配されることなどを明らかにした。これらの知見は、原著論文として発表するとともに、日本語と英語の総説を発表した。International Journal of Plant Developmental Biologyに掲載予定の総説は招待執筆(Invited Review)であり、本科学研究費の成果は高く評価されている。この総説では、エキシン形成には3つの重要な発育プロセス、すなわち、(1)スポロポレニンの合成と沈着、(2)プライムエキシンの合成、(3)カロース壁の合成と分解が重要であることをまとめてある。また、植物育種学への応用に関する総説を育種学研究に2報発表した。 花粉と柱頭の情報伝達機構に関しては、アブラナ科植物の自家不和合性の花粉側認識物質としてSP11が明らかにされているが、認識に重要な領域がRegion IIIとregion IVであることを明らかにした。種間不和合性は量的形質であることを明らかにし、QTL解析を行なうための独自のDNAマーカーを開発してマッピングの準備体制を整えた。
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