研究概要 |
本研究の目的は、「他殖性植物集団」と「適応性関連遺伝子の挙動」をキーワードとして完全他殖性であり、諸形質および生態型の分化が把握されている普通ソバ,ならびに自殖性の普通ソバをモデル植物として他殖性植物集団における適応性関連遺伝子の挙動を把握することにある。期間内の目標は(1)開花期あるいは種子生産性など適応関連遺伝子の選抜反応を集団遺伝学・生態遺伝学的に明らかにする。(2)モデル植物として普通ソバを用い、集団内での適応性関連遺伝子の挙動を把握する。(3)適応性関連遺伝子挙動解析検出モデルの構築である。 本年度は環境と遺伝子型の相互作用を考慮した集団遺伝構造変動の把握および適応性関連遺伝子の挙動把握のための雑種集団、すなわち夏型自殖性系統と秋型自殖性系統の雑種集団の育成を行った。また、集団内での個体適応度変異の把握と遺伝子流動との関係把握するため個体ごと開花フェノロジー,種子生産性の把握を試みた。SSRマーカーによって個体ごとに遺伝子型を決定し、父性解析による個体間遺伝子流動を把握した。さらに早期刈り取りによる集団内の遺伝構成を把握した。その結果、個体間遺伝子流動には距離による制約と開花期による制約が認められ、花密度が高い場合には著しく距離による制約が強まるが、同一距離においても開花期の違いによる制約が認められ、集団内では無作為交配が成されていないことが明らかになった。さらに、早期刈り取りによる遺伝構造の影響については、個体間の遺伝子流動をSSRマーカーで調査した結果、早生個体と晩生個体との交配次代は残っておらず普通刈り取りに比べ早生個体由来の次代が多く残されるため次代集団は早生化することが遺伝子型レベルおよび次代の開花期調査で明らかとなった。
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