研究概要 |
日長反応性遺伝子領域の遺伝子型を用いた集団遺伝学的および統計遺伝学的解析により、ソバの生態型分化の機構を表現型および遺伝子型に基づいて推定することを試みた。日長反応性遺伝子領域の探索を試みた結果、6個の相同遺伝子領域を確認した。また、QTL解析の結果、相同遺伝子領域以外にも日長反応性に関連する領域が認められた。FeLHY,FeGI,FeELF3遺伝子領域内において秋型集団と夏型集団では遺伝的多様性が異なり、秋型集団のほうが夏型集団より多様性が高いことが明らかとなった。これらの結果から、ソバの日長反応性による生態型分化の機構は、長日条件下で秋型集団がもつ潜在的遺伝変異が顕在化し日長反応性程度が低くなる方向への選択が生じて夏型が分化したことが推定された。野生サクラソウの適応関連形質の遺伝的多様性の評価を目的として、表現型の集団内・間の遺伝的多様性の評価および適応に関連する形質の把握と分子マーカーを用いた表現形質の遺伝的多様性の評価が可能であるかを検証した。花弁形質は自然選択に中立な形質であり集団内の遺伝的多様性の目視評価の指標となることが明らかとなった。複数の集団に由来する株について同一環境栽培を行い、出芽日と葉数の集団間の遺伝的分化程度(Q_<ST>)が自然選択に中立な分子マーカーによる遺伝的分化程度(F_<ST>)よりも顕著に大きく、これらが適応に関連している形質であることを明らかにした。出芽日に関する2遺伝子座で早晩を示す対立遺伝子が検出されたが、これらを用いて野生集団の出芽日の多様性を明確に評価することはできなかった。しかし、異型花柱性については、長花柱花と短花柱花にそれぞれ特異的な対立遺伝子を示す複数のマーカー遺伝子座が検出され、これらのマーカーを用いて集団内の花型の評価が可能であることが示唆された。
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