研究概要 |
わが国においては、減反政策によって水田を転換畑へ転用することが推奨されているが、本来水田として利用していた土壌は保水性が高いため、転換作物として栽培の拡大が見込まれるダイズの発芽・生育阻害がしばしば問題になる。したがって冠水抵抗性・耐湿性を強化したダイズ品種を育成することは、わが国においても非常に重要な課題であると考えられる。そこで本研究では、イネやシロイヌナズナより冠水抵抗性・耐湿性を強化できる遺伝子を同定することを最終目標とする。 本年度は、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターのエンハンサー配列をランダムに挿入させたアクティベーションタギング系統のライブラリープールのシロイヌナズナ種子31万粒の中から選抜された冠水抵抗性を付与されたと思われる2系統のT-DNA挿入位置をTAIL-PCRにより同定した。一つ目の系統(A90)については、T-DNAが2番染色体の3,294,500bp付近のAt2g07682の中に挿入されており、このT-DNA挿入領域はミトコンドリアDNA由来の620kbpの断片中であった。これらの領域内の配列は機能的な遺伝子をコードしていないと考えられるので、このA90系統に関する詳細な解析は行わなかった。二つ目の系統(A96)については、T-DNAが5番染色体の15,836,000bp付近のAt5g39500の中に挿入されていた。現在、このA96系統に関して、冠水抵抗性の再現性も含め、詳細な解析を進めている。今後、冠水抵抗性付与に寄与する遺伝子を同定し、ダイズへの形質転換を試みる。
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