研究課題
ヒルガオ科Ipomoea属植物は胞子体型自家不和合性を有しており、S遺伝子座の複対立遺伝子によって雌蕊と花粉との間の自他認識反応が制御されている。本研究は、S遺伝子座にコードされている遺伝子を同定し、自家不和合性の分子遺伝学的機構を明らかにすることを目的としている。本年度の研究成果の要点は、次の通りである。(1)S29ハプロタイプのコスミド・ライブラリーのスクリーニングによりS遺伝子座をカバーする9個のゲノムクローンを得た。これらのシークエンス解析により118kbに及ぶゲノム塩基配列を明らかにした。(2)S1およびS10ハプロタイプのゲノム塩基配列と比較した結果、S29ハプロタイプにおいて塩基配列の変異に富む約95kbpの多型性領域が明らかになり、この領域内に葉緑体およびミトコンドリア由来のDNA塩基配列が挿入されていることが判明した。(3)また、この多型性領域には柱頭特異的発現遺伝子(SE2)ならびに葯・花粉特異的発現遺伝子(AB2)が座乗していることが明らかになった。これらのことから、Ipomoea属植物においてはSE2およびAB2遺伝子が自家不和合性の自他認識に関わっている可能性が高いと考えられる。(4)柱頭特異的S遺伝子候補(SE1,SE2,SEA)についてRNAiコンストラクトを設計し、アグロバクテリウム法により遺伝子導入を行い形質転換体を作出した。これらの形質転換体のなかで遺伝子発現が顕著に抑制されている個体について受粉試験を行ったが、自家不和合性形質の変化は認められなかった。これは、3種の柱頭特異的遺伝子候補の間でアミノ酸配列の相同性が有り、蛋白質の機能を補完している可能性が示唆された。(5)これら柱頭特異的発現遺伝子の産物は膜貫通型蛋白質であると予測され、他の植物で知られているS遺伝子産物とは相同性が認められないことから、ヒルガオ科では新規の自家不和合性機構が働いていることが示された。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (5件)
Sexual Plant Reproduction 20・2(印刷中)
Abstract of the 19th International Congress on Sexual Plant Reproduction 2006・7
ページ: 166-167
Abstract of the 8th International Congress of Plant Molecular Biology 2006・8
ページ: 211-212
第14回日本育種学会中部地区談話会講演要旨 14
ページ: 6