研究概要 |
1.耕起法の転換が土壌生物に与える影響について調査した.黒ボク土圃場(福島)において,不耕起を継続してきた圃場に比べると,慣行耕起を不耕起に転換した2年目の圃場には土壌団粒の粒径分布や孔隙分布などに依然として大きな差があり,微生物活性やミミズの生息密度も低かった.これに対して,中型土壌動物(ヒメミミズや小型節足動物)の生息密度には差がみられなくなった. 2.土壌生物の生息分布と作物の根との関係について調査した.ライ麦畑(黒ボク土)において5月から11月にかけて,畝間の作物(ライ麦)の根を全く含まない土壌(非根圏土壌)と畝(作物体の直下)から採取した(根圏土壌)の微生物活性と動物量を調査した.根圏効果(根圏土壌/非根圏土壌の値)は,微生物の基質誘導呼吸(SIR)速度に比べて,線虫類,ダニ類およびトビムシ類の生息密度で大きいことが分かった.不耕起栽培下では慣行耕起下に比べて,根圏効果が大きいことが多く,生物活性は根の近傍に偏在する傾向が強かったが,ダニ類では例外的に耕起を実施した場合に根圏効果が大きい場合があった. 3.黒ボク土水田(宇都宮)において,冬期にカバークロップとしてヘアリーベッチを用いた不耕起栽培の土壌生物への影響を調査した.線虫類は湛水後に激減しその後徐々に回復していくという季節変化を示したが,不耕起下では慣行耕起下に比べて高い生息密度が維持されていた.原生動物の生息密度については耕起法による差は検出できなかった.小型節足動物は,湛水期間の前後に調査を行ったが,いずれの時期にも生息密度は低く,水田では重要な機能を果たしていないと考えられた. 4.国内外の文献を広く探索し保全耕起が土壌微生物や土壌動物の量や活性に与える影響についてレビューを行った.
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