研究課題/領域番号 |
16380017
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
作物学・雑草学
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
小葉田 亨 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (60186723)
|
研究分担者 |
大西 政夫 島根大学, 生物資源科学部, 助教授 (80185339)
田中 朋之 京都大学, 大学院農学研究科, 助教授 (50224473)
|
研究期間 (年度) |
2004 – 2006
|
キーワード | 高温 / 登熟 / イネ / コムギ / 酵素 / 同化産物 / 温暖化 |
研究概要 |
本研究の成果は二つの部分に分けられる。まず一つ目は、圃場もしくはそれに類似した環境において温度勾配温室あるいは作期移動により登熟期間に異なる温度環境を与えて温度と登熟との関係の定量化、品種間差を明らかにしたことである。一方に温度制御ファンをつけた長さの異なるビニールハウスで温帯および熱帯イネ品種が栽培され、登熟期に異なる3段階の温度が与えられた。その結果、受精が影響されるものの、温度に対する潜在的な登熟反応には品種間差がなかった。収量ポテンシャルの差が高温下の収量に影響した。また、複数の遺伝背景を持つイネを温度勾配温室において潜在的登熟をおこなうとみなせるポットで孤立個体で栽培し、登熟期の気温と登熟との関係を見たところ、不稔による影響を除くと、品種にかかわらずほぼ同様の関係が得られた。ただし、最大登熟速度が品種で異なった。春コムギをオーストラリアにおいて作期を3段階にずらして栽培し、気温と登熟反応の関係を見た。その結果、コムギでは着生粒数が登熟期に変化し、収量ポテンシャルが変化した。しかし、気温と潜在的な登熟能力との間には気温の異なる作期を通して同一の関係が得られた。また、イネとコムギにおいて穂のみを異なる温度環境下で培養して、十分な同化産物供給下での登熟反応をみたところ、イネでは最適登熟気温が30℃前後、コムギでは15℃前後であった。さらに品種間差について解析をおこなったところ登熟適温に差が認められた。次に二つ目はこれらの登熟に関する子実の生化学的機能と登熟との関係である。圃場栽培および穂培養したイネとコムギについて、登熟の重要な酵素であるシュクロースシンセターゼ、αアミラーゼを分析したところ、温度によって活性の反応が異なること、両者には逆の相関があること、窒素濃度が変化することがわかった。また、間引き処理は酵素活性を高めた。したがって温度が登熟を促進するのは温度が主要な酵素活性を高めるとともに同化産物供給も影響していることが示唆された。以上から、本研究は夏作物であるイネと冬作物であるコムギという大変異なる作物が、温度域はことなるもののきわめて類似した温度反応を示すことが明らかになった。ただし、登熟における温度反応の品種による違いが今後の温暖化による高温下の登熟改善に貢献できる可能性は低いとみなされる。
|