研究概要 |
果実の着色および発育・成熟に対する温度と植物ホルモンの影響についてブドウ、リンゴ、およびトマトを用いて生化学的、および分子生物学的に解析した。 初めに、アントシアニン生合成関連遺伝子発現に対する温度とABAの影響について、着色開始期のブドウを恒温区、および変温区(夜間低温処理)にて栽培し、着色とアントシアニン生合成遺伝子発現について解析した結果、アントシアニン生合成酵素の遺伝子発現は夜低温処理とABA処理により促進されており、その結果として着色が向上したことが示唆された。また、ブドウに^<13>CラベルしたCO_2を施用し光合成産物の分配を調査した結果、光合成産物の転流に対して、夜間低温およびとABA処理により果実への分配量が増加することが明らかになった。これらのことから、夜間の温度やABAは、アントシアニン生合成遺伝子の発現制御および光合成産物の転流量の制御に関与していることが明らかになった。 一方、トマト果実への糖転流・蓄積における温度の影響を調査するため, ^<13>Cトレーサー実験による果実への糖転流量、果実への糖蓄積、スクローストランスポーター遺伝子(LeSUT1)の発現について解析した結果、未熟期と緑熟期では、高温区(25℃)が低温区(20℃)に対し炭素分配率が高いことが明らかとなった。またLeSUT1の遺伝子発現についても高温区の方が高かった。しかし,赤熟果における糖含量については低温区の方が高く,果実発達初期における糖転流量やSUT発現の結果を反映したものではなかった。また、トマト果実を用いたトレーサー実験より、塩ストレス条件ではデンプン蓄積が促進されること、その際にADPグルコースピロフォスフォリラーゼ(agpS1, agpL1)の発現が誘導されることが明らかになり、agpL1遺伝子は、ABA、糖、浸透ストレスで誘導されることが示された。
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