研究概要 |
本研究成果は大別して4つ挙げることができる. 1)ニホングリレクチン(CCA)のオリゴ糖レベルでの特異性を解析し,N-リンク結合糖鎖のα(1-3),α(1-6)マンノトリオースのコア構造を認識することを明らかにした.ここで用いたEnzyme-linked lectin assay(ELLA)は新規な手法ではないが,これまでは相対結合強度を見るにとどまっていた.本研究において動力学的解析により,絶対的な解離定数(Kd)を求める手法を明らかにした. 2)CCAに特異的なプライマーを用いたゲノミックサザン解析の結果,2本のポジティブシグナル(CCA,sCCA)を確認し,いずれもmRNAに転写されていることが判明した.両者のうち,sCCAは偽遺伝子であり,ニホングリにはCCAをコードする遺伝子はCCAの一つしかないが,選択的スプライシングに起因するアイソフォームが存在することを明らかにした.また,ミックスプライマーを用いたサザン解析の結果,相同性の高い遺伝子は複数存在することも明らかにした. 3)ニホングリにおける休眠関連タンパク質は,グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)であることを明らかにした.GSTは茎と根の木部および芽において休眠期に発現し,冬期には可溶性タンパク質の約10%を占めていた.すなわち,ニホングリでは休眠期に蓄積するVSPはGSTであるといえる. 4)CCAは,窒素施肥に呼応して発現すると共に,若い組織や花の器官において発現していた.したがって,CCAは,一時的に窒素を捕捉しておくタイプのVSPであるといえる.
|