研究概要 |
ニホンナシの花粉側の遺伝的制御因子を探索するため,平成16年度はS-RNase周辺領域のBACコンティグ作成とS-RNaseと結合するタンパク質の解析を中心に研究を展開した. 自家和合性品種‘おさ二十世紀'(S2S4^<sm>)に由来するS4^<sm>ハプロタイプは,S4ハプロタイプからS4-RNase遺伝子を欠失しているが,花粉側S4遺伝子の機能は有している.したがって,S4とS4^<sm>ハプロタイプのゲノム構造を比較して欠失領域を特定することにより,欠失領域外に存在する花粉側S遺伝子を効率的に探索できると考えられる.この欠失領域を特定し,花粉側3遺伝子を探索するための材料として,‘二十世紀'(S2S4)に由来するS4ホモ個体から2つのBACライブラリー(平均インサートサイズ93kb,26,000クローンと平均インサートサイズ116kb,10,000クローン)を作製した.S4-RNase周辺領域のBACコンティグを構築し,S4smハプロタイプの欠失領域の特定を試みたところ,S4^<sm>ハプロタイプではS4-RNaseを含む約380kbが欠失領域していることを明らかにした. 花柱の花粉管誘導組織で花粉に取込まれたS-RNaseは不和合組み合わせではribosomal RNAを分解し花粉管伸長を停止すると考えられているが,柱頭浸出液にもS-RNaseが含まれていることが分かった.ニホンナシにおける組織培養の外植体の条件と調整法及びNAAやTDZなどの最適濃度を再検討したところ,10-20%の再分化率向上が見られた. ビオチン化S-RNaseを用いたaffinity capture法により,花粉管伸長阻害時にS-RNaseと相互作用をする因子を単離した.現在LC-MSを用いてその同定を進めている.
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