研究概要 |
Polymyxa graminisによって植物の根から根へ伝搬されるFurovirus属植物RNAウイルスの病原性と伝搬性を明らかにするために、Furovirus属のタイプ種であるムギ類萎縮ウイルス(Soil-borne wheat mosaic virus, SBWMV)の日本分離株を用いて下記の実験を行い、成果を得た。 (1)ムギ類植物への全身感染におけるウイルス外被タンパク質、p37推定細胞間移行タンパク質、およびp19高システイン含タンパク質の役割を明らかにした。感染性cDNAクローンを用い、SBWMVの複製酵素遺伝子以外の遺伝子をGFP遺伝子で置換し、感染性in vitro転写産物接種後の植物体内におけるGFP蛍光の拡大を蛍光顕微鏡で追跡した。また、外被タンパク質、p19およびGFP抗体を用いたウエスタンブロット解析、およびウイルスゲノムに特異的なプローブを用いたノーザンブロット解析により、ウイルス複製RNAおよびウイルスタンパク質翻訳産物を検出した。その結果、外被タンパク質は細胞間移行および長距離移行に必須ではないが有用である事、p19は隣接細胞への移行効率の向上に機能し全身感染に必須である事、またp37は細胞間移行タンパク質である事を証明した。 (2)RNA2の外被タンパク質遺伝子下流のリードスルー領域の欠失変異の場所と長さを特定する要因を解析した。その結果、RNA2の3'側にコードされるp19サブゲノムRNAの転写に必要なcis配列の存在が欠失領域を決定する要因の一つである事を証明した。 (3)グロースキャビネット内でのPolymyxa graminis遊走子によるSBWMV接種系を確立した。 (4)感染適温を17℃とする野生型SBWMVでは感染出来ない25℃で全身感染する変異株を分離し、野生型ウイルスの低温要求性を理解する上での発端を築いた。
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