研究課題
原生動物Polymyxa graminisの遊走子によって土壌伝染し、イネ科作物の根に感染語全身性萎縮モザイク症状を引き起こすFurovirus属植物RNAウイルスの病原性および伝搬性機構を明らかにする目的で、Furovirus属のタイプ種であるムギ類萎縮ウイルス(SBWMV、Soil-borne wheat mosaic virus)を用いて下記の実験を行い、成果を得た。(1)前年度に引き続き、SBWMVの温度感受性決定要因の解析を継続した。SBWMV日本株および米国株を用いた温度非感受性ウイルスゲノムの解析から、p37移行タンパク質の172番目および174番目のトレオニンが温度感受性に関与する事、このトレオニン残基はリン酸化およびp37に対する安定性に影響しない事が確認された。(2)米国産強病原性Lab1変異株RNA2上のp19システインリッチタンパク質内に病原性決定アミノ酸残基を特定した。前年度の結果を合わせて、外被タンパク質/リードスルータンパク質と共にp19タンパク質が異なる機構で病原性を高めている事が示された。(3)RNA2にコードされる外被タンパク質、その下流域のリードスルー領域、および3'側にコードされるp19システインリッチタンパク質が病原性に関与する事が明らかになったため、それぞれのタンパク質と相互作用する宿主因子の探索を試みた。その過程で従来の標準的酵母ツーハイブリッド法を改良し、bait融合タンパク質遺伝子を酵母染色体に組込み、cDNAライブラリースクリーニング効率を格段に向上させた系を開発し、特許出願した。ウイルスタンパク質との特異的結合が確認された宿主因子については継続して病原性との関わりを検討中である。(4)Polymyxa伝搬性機構に関する研究は、予期せぬ実験室の移動と配置換えにより中断し、新たな成果は得られなかった。
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Journal of General Virology 87
ページ: 2413-2421
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