研究概要 |
本研究は宿主-病原菌間の分子応答機構の解明において、DNAマイクロアレイを用いて病原菌側および宿主側の双方からの情報ネットワークを解明し、植物保護の新しい戦略提案を行うことを目的とする。本年度は以下の結果が得られた。 1、シロイヌナズナ抵抗性遺伝子(R-gene)の探索 アブラナ科野菜類炭そ病菌337-5系統を用いた接種実験から11種類(Ts-2,Tul-0,Chi-0,Eil-0,Fe-1,Gr-1,Hi-0,In-0,Lan-0,Li-2,Nok-2)ロイヌナズナ生態型が抵抗性を示すことが明らかとなった。その中で罹病性宿主であるCol-0との交配実験からエコタイプIn-0の抵抗性が優性の1遺伝子により支配されていることが示唆された。この337-5株に対するIn-0の抵抗性を支配する遺伝子をRCH337とし、共優性分子マーカーを設計し、遺伝子マッピングを行った。その結果、RCH337と極めて密接に連鎖している4番染色体上腕上のCAPSマーカー(MO1)を得ることに成功し、このマーカーをもとにターゲット遺伝子のクローニングを行い、Col-0の形質転換植物の作成に成功した。 2.アブラナ科野菜類炭そ病菌のDNAチップ作製 感染過程における異なる段階で発現する遺伝子のcDNAライブラリー作成を行い、マイクロアレイ解析に供試するcDNAの評価実験を進めた。ライブラリーから1742クローンのシークエンスおよびアノテーション解析行い、598種のユニークな遺伝子を同定した。 3.アブラナ科野菜類炭そ病菌の感染決定に与る遺伝子変異株の作製 ウリ科野菜類に感染する炭そ病菌を用いた実験から植物の防御応答関連タンパク質に対する抵抗性に与る遺伝子ClSSD1を同定した。イネいもち病菌からClSSD1のオルソログ遺伝子をクローニングすることに成功し、遺伝子破壊株の作出に成功した。遺伝子破壊株は顕著に病原性を欠いていたことから本遺伝子がいもち病菌においても病原性に必須であることを明らかにした。
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