研究概要 |
1)キボシカミキリの早熟蛹化が誘起される条件下で発現量が増加する遺伝子をディファレンシャルディスプレー法を用いて探索した.発現量が変化したバンドの一つからβ-N-acetylglucominidase遺伝子に高い相同性を示す部分配列が得られ,この配列を持つ遺伝子をPhNagと名づけた.RACE法を用いてPhNagの全長を決定したところ,推定されるORFは1815bpであった.PhNagの発現パターンを定量RT-PCRによって調べたところ,すべての組織において摂食条件下で蛹化に向かう4齢幼虫と5齢幼虫,絶食条件下で早熟蛹化に向かう4齢幼虫の前蛹で強い発現が見られた.また,脳と唾液腺においては,4齢脱皮,5齢脱皮直前にも発現がみられた.PhNagはその配列からキチン分解型と推定された. 2)20ヒドロキシエクダイソン(20HE)応答性のearly geneの一つで,蛹化に不可欠なタンパク質をコードする多くのlate geneの転写因子として機能するBroad-Complex(BR-C)をキボシカミキリからクローニングしPhBR-Cと命名した.ショウジョウバエでは,zing fingerドメインの選択的スプライシングによりZ1,Z2,Z3,Z4のアイソフォームが生成することが知られているが,本研究ではZ1,Z4に高い相同性を示すアイソフォームが発見された.脳,唾液腺,表皮のcDNAをテンプレートとして定量RT-PCRを行った結果,どの組織においてもガットパージ後から前蛹にかけて発現量の上昇が見られた. 以上,本年度は蛹化に関与する2つの遺伝子,PhNagとPhBR-Cを鞘翅目昆虫から初めてクローニングすることができた.
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