研究概要 |
カイコと日本産クワコのフィプロインH鎖遺伝子のイントロンをPCRで増幅後塩基配列を決定・解析した。このイントロンは高度に保存され精度の高い系統関係は得られないが、それでもなおカイコ、日本産クワコともハプロタイプが複数観察された。また。日本産クワコog遺伝子における挿入複合体の検討により内側の挿入の脱出を示すフットプリントを持つ配列が確認された。 クワコのアルカリ性フォスファターゼの二つの遺伝子ではカイコと同じく円筒細胞でALP-M遺伝子が、盃状細胞ではALP-S遺伝子が発現することを免疫組織染色によって確認した。中国産クワコ#348のALPクラスターの構造決定より介在配列の構造はカイコC124とよく一致した。調査したカイコ品種の介在配列はいずれも、塩基配列の再配置や挿入/欠損により中国産クワコの介在配列から由来した可能性が示唆された。 Bmmar6のITR特異的primerを用いて日本産、韓国産クワコのゲノムDNAを鋳型としたPCRによるMLE配列を増幅において、非常に相同性の高い一群が単離された。このMLEは、クワコを捕食可能なジョロウグモ、日本産の他の鱗翅目昆虫にも存在し、比較的最近生じた水平伝播による種間の拡散を示唆した。日本のクワコに特徴的な構造のCecropia-ITR-MLEに挿入されたレトロトランスポゾンL1Bmの挿入部位の特異性、L1Bmおよび挿入を受けたMLEの相同性の解析はCecropia-ITR-MLE+L1Bmユニット自体の水平伝播の可能性を示した。 北海道から3個体、埼玉県1個体、長野県5個体のクワコを採集し、染色体を細胞学的に観察したところいずれもn=27であった。カイコでは九州大学の保存系統のうち、11系統(e03,e11,f03,f60,n60,p22,t45,r53,w43,w45,w46)は、全てn=28であった。
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