研究概要 |
アカイエカ種群蚊の昆虫生理活性物質および殺虫剤の代謝を担うシトクロムP450分子種を明らかにする目的で,ネッタイイエカの62のP450遺伝子,11の殺虫剤代謝に関連する酵素遺伝子,3つのハウスキーピング遺伝子,その他GenBank公開情報などに基づく125の遺伝子,およびAn.gambiaeの23のP450遺伝子の合わせて224の遺伝子を対象にして,2568種の60merオリゴDNAをプローブとするマイクロアレイを作製し,Cy3-Cy5標識競合法に基づき,アカイエカ種群3亜種に含まれる6つのエトフェンプロックス抵抗性系統(終齢幼虫の抵抗性比は概ね10^3)の蚊における遺伝子発現量を対応する同亜種の殺虫剤感受性系統蚊と対にして比較した。アカイエカ種群の62種P450遺伝子の6つの抵抗性系統における発現量比は,全372ケースのうち69が2倍以上で15が1/2以下であった。このうち,5〜6つの抵抗性系統で共通して2倍以上の発現量比を示す2種のP450遺伝子,1つの抵抗性系統で48倍の発現量比を示す1つのP450遺伝子,感受性系統蚊で内部標準としたリボゾームタンパク質遺伝子(RPS3)に匹敵する大きな発現量がありかつ4つの抵抗性系統で2倍以上の発現量比を示す1つのP450遺伝子などが,過剰発現によりピレスロイド抵抗性に寄与する可能性のあるP450分子種として絞り込まれた。定量PCR法に基づき,ネッタイイエカ抵抗性系統の1つのP450遺伝子座には6倍の遺伝子増幅を生じていることを示した。一方,ミクロソームモノオキシゲナーゼ系に含まれP450に電子供与を行うシトクロムP450運元酵素,b5,b5還元酵素の各遺伝子の発現量には抵抗性系統における違いは認められなかった。
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