研究概要 |
本プロジェクトにおいて得られたダイズのアーバスキュラー菌根共生系の成立と元素供給能に関する重要な知見をまとめると以下のようになる. 1.エンレイ(野生型)とEn6500(過剰菌根変異体)に共生する土着AM菌の菌根形成率とフロラを比較した。その結果En6500の樹枝状体形成率はエンレイに比べ,統計的に有意に増大していた(約1.6倍).またエンレイにはGigaspora属とGlomus属,En6500にはGigaspora属とAcaulospora属が高い割合で共生していることが明らかとなり,両ダイズのAM菌フロラは異なることが判明した.またEn6500の根部に野生型の茎葉部を接木すると,AM菌の樹枝状体形成が抑制されたことから,ダイズの菌根形成は茎葉部に由来するオートレギュレーション機構の制御を受けていることが初めて確認された. 2.水耕培養によりエンレイおよびその根粒形成変異体の根の浸出物を回収し,これがGigaspora margaritaの菌糸伸張に及ぼす影響を観察したところ,培養7日目の外生菌糸長はエンレイと変異体の根浸出物の間で差がないことが判明した. 3.エンレイおよび根粒超着生品種「作系4号」を圃場で栽培し,根粒形成および菌根形成を経時的に調査した.その結果,作系4号の菌根形成率はEn6500と同様,エンレイに比べて終始高く推移することを見出した.また両品種をポット試験に供した結果,温度条件および窒素条件を整えることにより作系4号の生育がエンレイに勝る可能性が示唆された. 4.AM菌の外生菌糸中にリン酸供給能に強く関係するとみられる,ポリリン酸蓄積オルガネラの存在が明らかにされた. 5.AM菌の樹枝状体形成と関係するいくつかの微量元素の存在が明らかにされた.
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