研究概要 |
1.形質転換体の取得:(1)トマト再生系を用いて、エクトイン合成遺伝子をアグロバクテリウム法で導入し、トマトの形質転換体の作出を行った。T_1植物より完熟果実を収穫し、種子を収集した。(2)それから得られたT2個体について、遺伝子発現をノーザンブロット法などで確認したところ、遺伝子発現が確認され、葉で根よりも強く発現することが分かった。 2、形質転換体の塩ストレス耐性:T2個体について野生株との比較の下に、予備的に塩ストレス耐性を比較した。(1)塩ストレス耐性の評価:トマト野生株および形質転換体(T_2植物)をポット(2.5L)で土耕栽培し、果実肥大期にNaCl(0-100-200mM)添加処理(毎日200mL潅水)を行った。(1)NaCl添加処理(0〜7日間)によって、相対生長量は減少したが、この減少程度は、形質転換体で野生株より小さかった。すなわち、形質転換によって、塩ストレス耐性が向上することが示唆された。(2)NMRによるエクトイン定量の結果、この生成が確認され、葉よりも根における集積が多いことが分かった。すなわち、エクトイン合成遺伝子の発現は葉で、エクトイン集積は根の方がそれぞれ高いことが分かった。(3)さらに、塩ストレス耐性機構における形質転換の意義について解析した。その結果、(1)ソース・シンク関係から解析した所、トマトにおいては、ソース(葉の光合成能)よりも茎の生長〔シンク:ひずみ計による茎径の計測)の方がより早期に阻害されるが、この両者の阻害が形質転換によって軽減される傾向が示唆された。 この結果をさらに詳細に解析するため、現在、塩添加処理が^<13>C,^<15>N-標識化合物の転流などに与える影響や、茎における糖・でんぷんの集積状態などについて、また、これらと茎の収縮の関係を詳しく検討している。この中で、茎の収縮と篩管転流の関係に特に注意深く解析を行っている。
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