研究概要 |
1.エクトイン合成遺伝子による形質転換体の塩ストレス耐性の評価とその機構解明(実岡):トマトの形質転換体T_2植物を用いて、塩ストレスに対する耐性を相対生長率より評価し、その耐性が強化された要因を光合成・転流、シンク能(果実の径変化の連続モニタリング)より評価した。1.形質転換体の塩ストレス耐性の評価:トマト野生株(品種:桃太郎)および形質転換体(T_2植物)を栽培し、果実肥大期に、塩ストレス耐性を比較した。すなわち、ポット(10-L)で土耕栽培し,果実肥大期にNaCl(0-100-200mM)添加処理(毎日200mL潅水)を行った。処理(0〜28日間)が、相対生長量、各器官のエクトイン集積(NMRによる定量)、水ポテンシャルおよび無機元素(Na,Cl,N,K,Pなど)集積状態などのパラメータに与える影響を調査した。これらの結果より、形質転換の塩ストレス耐性における意義を評価した。 2.塩ストレス耐性機構の解明(藤田):上記と同様に土耕栽培したトマトの形質転換体とその野生株の比較のもとに、果実肥大期における塩添加処理が各種のパラメータに与える影響を比較検討し、エクトイン生成が塩ストレス耐性機構に与える影響を解析した。(1)ソース・シンク関係からの解析:トマトにおいて、エクトイン生成が塩ストレスによる生長阻害に与える要因について、ソース能(葉の光合成能)およびシンク能(果実の肥大速度の連続測定、および標識炭素の転流)関係より解析した。具体的には、塩添加処理が光合成速度、果実の径変化および^<13>C-標識化合物の転流などに与える影響を一斉に連続測定し、どのパラメータが最初にもっとも強く阻害を受けるかを検討した。(2)シンク能の塩ストレス耐性:塩ストレスがトマトの果実・茎などのシンクの生長に与える影響を^<11>C-標識化合物の転流〔約2時間〕および果実とその近傍の花梗・茎の収縮状態を詳細に連続測定した。さらに、これと平行して、果実のスクローストランスポーター、インベルターゼ活性、Naイオンチャネル活性等に対する塩ストレスの影響も測定した。これらの結果から、塩ストレスによって最初に阻害される機能について解析を行った。
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