収量性や糖の集積速度の異なる三品種のサトウキビ(Ni15、F172、NiF8)を供し、サトウキビに内生する窒素固定細菌による窒素固定量が、施肥窒素の供給や品種の違いにより変動する程度を明らかにしようとした。その結果、1)施肥窒素の供給は内生菌による窒素固定活性を低下させる、2)内生菌による固定窒素の寄与率(植物体に存在する全窒素量に対する内生菌による固定窒素の割合)は、肥料窒素の供給を停止すると増加し、その増加率は品種により大きく異なる、3)内生菌による窒素固定量は、宿主サトウキビに内生する窒素固定細菌(内生菌、エンドファイト)の生息密度やそれらの窒素固定活性よりも、品種による影響が大きい、などの知見が得られた。これらの研究結果の詳細は、2005年3月に発行された宮崎大学農学部研究報告を読んでいただきたい。 また、内生窒素固定細菌の接種法、感染経路、感染後に定着して増殖する場所などを明らかにするために、GFPで標識したハーバスピリラム(Herbaspirillum spp.B501gfp1)のサトウキビへの接種試験を実施した。接種方法には、根を菌の懸濁液に浸漬する方法と培地に添加する方法を行った。前者では、10^8cells/mlの菌液に1時間漬けた後、経時的に調査した結果であり、後者は、10^2cells/mlと10^8cells/mlの異なる濃度の菌懸濁液を培地に添加して実施した。その結果、1)接種した内生菌の感染経路は、側根が発生する際に生じる細胞間隙が主体であり、導管を通じて移行する様子、2)感染の難易は品種により異なる、3)菌の移行速度は接種時の菌密度で異なり、低濃度接種では葉身への移行に4週間を要したが高濃度では1週間程度である、などが判明した。これらの結果は、学術雑誌に投稿中である。
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