研究課題
基盤研究(B)
植物体内に生息する窒素固定細菌は窒素固定エンドファイトと呼ばれている。窒素固定する植物は根粒菌の共生するマメ科植物とフランキアの共生する十数種の植物に限られている。しかし、ブラジルにおいて、20数年前、サトウキビの中には根粒構造を伴わない共生窒素固定系の存在が示された。窒素固定エンドファイトの生息するサトウキビの中には60〜70%の窒素固定寄与率を示す場合のあることが報告された。その寄与率はマメ科植物-根粒菌の共生系に匹敵する。また、窒素固定エンドファイトは、サトウキビの他にイネ、ムギ、ソルガムといったイネ科の主要作物、バナナ、パイナップル、チャなど、科を越える多くの植物種に内生することも明らかにされた。このことは、マメ科以外の作物にも窒素固定機能を付与することの可能性を示した。しかし、これを実現させるためには幾つかの解決すべき問題点がある。その中で特に重要なことは、有用菌の選抜と、植物体内への定着と増殖である。増殖と定着の指標には窒素固定量の把握が必須であり、本研究では、この3点を重点的に検討した。研究期間は平成16年から19年までの4年間であり、前半では、GFP標識のHerbaspirillum sp.の接種試験、サトウキビとサツマイモから単離した窒素固定細菌の同定と窒素固定活性の測定と、サトウキビとサツマイモから単離した窒素固定細菌へのGFPによる標識を試みた。後半には、GFP標識菌を利用した接種法の検討と、一定の生育期間を通じて窒素固定量を推定する方法を検討した。その結果、サトウキビから12菌株、サツマイモから27菌株の窒素固定細菌を単離した。供したHerbaspirillum sp.、Enterobacter sp.、Pantoea sp.に関する宿主特異性は認められなかったが、菌と植物種や品種との間には親和性の強弱が認められた。また、接種法としてはレオナルドジャーに植えた幼植物の地下部に10^8cells/mlの高濃度が高い効果を示したが、実用技術としては萌芽茎への接種を検討すべきであるとの結論を得た。
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