還元的TCA回路における炭酸固定酵素((1)Pyruvate : ferredoxin oxidoreductase反応[アセチル-CoAからピルビン酸を生成する反応]、(2)2-Oxoglutarate : ferredoxin oxidoreductase反応[スクシニル-CoAからα-ケトグルタル酸を生成する反応])を取り上げた。(1)については遺伝学的解明を進めた。また、還元的TCA回路の効率性並びに機能性に関して、遺伝学的バックグラウンドを基にした生化学的研究を行うために、H.thermophilusにおける遺伝子破壊系を構築した。具体的には、好熱菌由来のカナマイシン耐性遺伝子を用いた相同組み換えを用いる系を構築した。さらに、構築した遺伝子破壊系を用いて、上述の(2)に関わる2種類の炭酸固定酵素遺伝子それぞれを破壊し、生理学的な表現系の違いを明らかにすることにより、それぞれの遺伝子産物の役割を明らかにした。(1)、(2)の酵素反応共に、フェレドキシンを電子供与体としている。そこで、還元的TCAサイクルについて、中心的な役割を果たしているフェレドキシンに関する代謝システムの全容を明らにする研究も開始し、全体像を掴むことが可能となってきた。また、ATP : citrate lyase反応[クエン酸をアセチル-CoAとオキザロ酢酸へ解裂する反応]、を酵素学的に詳細に解明し、さらに遺伝子を取得した。 また、3-ヒドロキシプロピオン酸サイクルにおける炭酸固定反応Acetyl-CoA carboxylaseの生化学的研究、さらには構造生物学的研究を展開するために、異種生物における同タンパク質の発現系構築を鋭意試みたが、未だ成功には至っていない。
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