研究概要 |
細菌細胞の細胞壁の主成分は,細菌の種類により変化するものの,糖ペプチドからなるペプチドグリカン(枯草菌では約50%),陰イオンポリマーであるタイコイン酸と脂質を含むリポタイコイン酸(枯草菌では約50%)の他に,一部の細菌ではポリペプチドや多糖も含む層から出来ている.本研究ではモデル生物であるグラム陽性細菌 枯草菌を材料に,ペプチドグリカンに作用するタンパク質とタイコイン酸に焦点をあて,タンパク質の機能の解明を進めた.タイコイン酸合成変異株gtaB変異によりファージφ29の感染性が無くなることが知られていたので,φ29の局在部位が,タイコイン酸の局在部位を表わすという仮定の下に,ファージφ29のタンパク部分を結合前に染色し,ファージを細胞に感染させることを試みた.しかし染色剤の影響でファージの感染性が極度に低下し,この実験は不適であった.一方φ29のコートタンパク質にGFPを付けることにより,ファージの局在部位を明らかにしようと試みたが,このようなファージを枯草菌で構築することはできず,ファージの局在部位を明らかに出来なかった.一方細胞分離酵素と相互作用することが期待される2つの比較的小さなタンパク質が細胞表層より認められた.これらタンパク質の1つは細胞分離酵素LytF, LytE, CwlSと類似の細胞表層局在を示した.さらに新規にペプチドグリカンのペプチド側鎖のL-alanine-D-glutamic acidの間を切断する溶解酵素CwlK(YbjL)を発見した.このタンパク質はN末端配列より,Type IIのリポタンパク質として分泌されると推定された.
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