研究概要 |
細菌細胞の細胞壁の主成分は,細菌の種類により変化するものの,糖ペプチドからなるペプチドグリカン(枯草菌では約50%),陰イオンポリマーであるタイコイン酸と脂質を含むリボタイコイン酸(枯草菌では約50%)の他に,一部の細菌ではポリペブチドや多糖も含む層から出来ている.本研究ではモデル生物であるグラム陽性細菌枯草菌を材料に,ペプチドグリカンに作用するタンパク質とタイコイン酸に焦点をあて,タンパク質の機能の解明を進めた.その結果栄養細胞分裂期の分裂部位や両極を特異的に認識する細胞壁溶解酵素CwlSを新たに見つけ,以前に解析したLytF(CwlE),LytE(CwlF)と同じくペプチド側鎖のD-Gluとmeso-A_2pmの切断に働く酵素であるとともに,細胞分離においても協調して働くことを,免疫蛍光顕微鏡を用いて明らかにした.さらにタイコイン酸合成変異株を使って,タイコイン酸が細胞分離溶解酵素の局在に影響することをin vitroでの結合実験,ならびに免疫蛍光顕微鏡を用いて明らかにするとともに,細胞分離酵素に含まれるLysMドメインの役割を明確にした.そしてlysMドメインがタイコイン酸欠損株において,側面においては螺旋状に結合することを明らかにした.さらに新規にペプチドグリカンのペプチド側鎖のL-alanine-D-glutamic acidの間を切断する溶解酵素CwlK(YojL)を発見した.一方細胞壁溶解酵素を転写レベルで制御する2成分システムYvrGHbを明らかにし,ペプチドグリカンの糖鎖とL-alanineの間を切断する酵素CwlCの細胞壁結合ドメインの立体構造も明らかにした.
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