研究概要 |
本研究では、微生物酵素を用いた2つのキラル中心を持つ化合物の生産プロセスの開発を目指した。(4R,6R)-Actinolおよびd-Pseudoephedrineをモデルとして、その立体選択的合成プロセスの開発を行った。具体的な手法としては、(4R,6R)-Actinolについては2段階の酵素反応を用い2カ所の炭素原子にキラル中心を導入する生産プロセスの開発を試み、また、d-Pseudoephedrinに関しては、ラセミ体カルボニル化合物を出発基質として、その一方のエナンチオマーのみを不斉還元して同時に2カ所の不斉中心を与える合成プロセスを検討した。 1.(4R,6R)-Actinol生産のために、2段階反応による2カ所のキラル中心導入反応プロセスの検討を行った。Torulopsis属酵母の生産する新規な旧黄色酵素について、レボジオン還元酵素との組み合わせにより、2段階反応を並行して行わせる方法でKetoisophoroneから一気に(4R,6R)-Actinolへと変換する可能性を示した。また、Torulopsis属酵母の旧黄色酵素遺伝子のクローニングを行い、旧黄色酵素ライブラリーの充実を図った。 2.Rhodococcus属細菌由来のアミノアルコール脱水素酵素および補酵素再生系酵素遺伝子を共発現させた大腸菌を用いて、MAK不斉還元を行うと、d-Pseudoephedrineの蓄積により反応阻害を受けた。そこで、アミノアルコール脱水素酵素遺伝子にランダム変異を導入し、安定性の向上した変異酵素を得ることに成功した。この変異酵素により、d-Pseudoephedrine生産性の向上が見られた。
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