高いセルラーゼ活性を有する耐熱性カビThermoascus aurantiacus IFO9748株のcDNAライブラリーを構築し、データベースよりえられた他のカビの遺伝子配列の保存領域を利用してT.aurantiacusのβ-グルコシダーゼ遺伝子bg1を取得した。次いでこの遺伝子をメタノール酵母Pichia pastrisにおいて発現させ、BG Iを細胞外に蓄積させ、この組み換え型酵素を精製し、その性質を調べた。しかしながらこの酵素は活性が低く耐熱性もそれほど強いものではなかった。そこで、既にT.aurantiacusは、誘導培養により高い耐熱性を持つβ-グルコシダーゼを生産することが確認されていたので、直接その耐熱性のβ-グルコシダーゼの精製を行い、単一酵素標品を取得し、その性質を調べた。本酵素のN-末端アミノ酸配列は、BG Iのそれとは全く異なり、さらに至適温度は70℃であり、また60℃で1時間の熱安定性を示した。このように、本酵素がBG Iとは全く異なることが明らかとなったので、この酵素をBG IIと命名し、その遺伝子bg IIの取得を試み成功した。ヌクレオチド配列から推定したアミノ酸配列では、BG IとBG IIは43.77%の相同性を有していた。次いでbg IIによるメタノール酵母P.pastrisの形質転換を試みた。BG Iの時と同様に、本酵素のcDNAにα-ファクターシグナルペプチドおよびHisタグのヌクレオチド配列を導入し、これをアルコール酸化酵素(AOX)プロモーターおよびターミネーターに連結し、酵母用発現ベクターpPICZaAに導入、P.pastrisを形質転換した。形質転換体は、YPMプレートで活性を示し、液体培養では酵素は培養液中に排出され蓄積した。そこでこの組み換え型酵素を精製し、その性質を調べたところ先に精製したnative酵素と同じであった。即ち本組み換え型酵素は、70℃において最大活性を示し、60℃、60分間のインキュベーションで活性を保持していた。 以上のように、我々はT.aurantiacusの耐熱性β-グルコシダーゼの精製、遺伝子bg IIの取得、さらにその高発現に成功した。
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