研究概要 |
黒麹菌由来のcDNAで形質転換した出芽酵母のAl耐性能からAl耐性遺伝子が同定された。この中に、アセチルCoAシンテターゼをコードする遺伝子(ATF5)が単離された。また、出芽酵母の培養液から、中性のpHでAlを溶解する物質として、2-イソプロピルリンゴ酸が同定された。ATF5によりアセチルCoAの生成が促進され、その結果、2-イソプロピルリンゴ酸の生成が促進され、Al耐性能を獲得したものと考えられた。Alと2-イソプロピルリンゴ酸との結合様式を、^<27>Al NMR,1H NMR 1H DOSY,CSI-MSで調べた結果、Alと2-イソプロピルリンゴ酸が2:4の比で結合していることが明らかになった。出芽酵母を用いた実験から、2-イソプロピルリンゴ酸は従来Al耐性能を付与することが知られているリンゴ酸よりもかなり強いAl耐性能を有することが分かった。イソプロピル基の電子供与性効果のために、Al錯体が安定化されているものと推定される。 このAl耐性能を高等植物に付与することを検討した。まず、シロイヌナズナのAl耐性能のアッセイ系について検討した。従来の方式は、固化培地にゲランガムが用いられているが、ゲランガムはその構造の中に多くのカルボキシル基を含んでいるために、Al耐性能を性格に評価できなると考えた。そこで、固形化成分としてアガロースを用い、種々の条件を検討し、pH4.2および5.8での培地の作製を可能とした。このシステムで、0.6mM Alを用いて、Al耐性能の評価が可能となることを示した。また、2-イソプロピルリンゴ酸の生成を促進させるために、シロイヌナズナから3種類の2-イソプロピルリンゴ酸合成酵素をクローニングした。
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