研究概要 |
液胞は植物細胞で多様な機能を担っている。たとえば生育に必須なCa^<2+>,Mn^<2+>,Mg^<2+>,Zn^<2+>などを液胞に蓄積し,必要なときに細胞質に供給する仕組みをもっている。この機能に関わる分子のうち金属イオン/H^+交換輸送体(Ca^<2+>/H^+交換輸送体等),Zn^<2+>輸送体とプロトンポンプに注目し,金属イオンの隔離,貯蔵,供与の機能解明を目指した。交換輸送体はV-ATPaseとH^+-ピロホスファターゼ(V-PPase)の2つのプロトンポンプが形成するpH勾配を利用して作動する。両者の作動機構,協調機構,生理学的特性も解析した。 (1)イネのCa^<2+>/H^+交換輸送体の1つの分子種について,一次構造上の特徴,基質(Ca^<2+>,Mn^<2+>,Cd^<2+>等)の選択性,機能調節の特徴を明らかにし,遺伝子がトライコーム,気孔,維管束細胞等に特異的に発現すること,過剰のCa^<2+>存在化で発現誘導されることを明らかにした。遺伝子破壊株と過剰発現株を作出し表現型を解析中である。 (2)V-ATPaseは10種類のサブユニットで構成され,一方V-PPaseは80kDaのタンパク質のみで構成される。シロイヌズナのV-PPase遺伝子欠損株を解析したところ,糖のない培地で生育させると植物体は初期成長が抑制され小さくなることが判明し,本酵素が生育に必須であることを証明した。本変異株では同じ液胞膜に存在するV-ATPaseが活性化されることを見出した。また,V-PPaseについては分子構造,作動機構を変異導入法により解析し新規構造モデルを提案した。 (3)シロイヌナズナの液胞膜Zn^<2+>輸送体を分子遺伝学的に解明した。液胞膜局在をGFP法,細胞分画法で証明し,さらにZn^<2+>輸送体遺伝子欠損株が高濃度Zn^<2+>に感受性となり,細胞死,組織の壊死に至ることを発見し,本輸送体のZn^<2+>ホメオスタシスへの寄与を証明した。 (797文字)
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