ユビキノン(UQ)は補酵素Q(CoQ)とも称される脂溶性抗酸化物質であり、生体内において電子伝達系の必須成分として重要な機能を果たしているのみならず、生体内で唯一合成できる脂溶性抗酸化物質である。そのため最近ではサプリメントとして広く使用されその需要は年々高まっている。 これまでにユビキノンの側鎖長を決定する酵素であるポリプレニル2リン酸合成酵素について広く解析を進めてきたが、本研究では2種類のソラネシル2リン酸合成酵素を植物より同定した。 既知のポリプレニル二リン酸合成酵素遺伝子配列を基にシロイヌナズナ配列データベースから2つのクローンを得て、それぞれAt-SPS1とAt-SPS2と命名した。これらの遺伝子をそれぞれ大腸菌において発現させ、UQ抽出を行ったところ、UQ-9の生成が確認できた。すなわち単離した遺伝子がソラネシル2リン酸合成酵素をコードしていることを示した。また、分裂酵母のミトコンドリア移行シグナルを付加した融合蛋白質発現プラスミドを構築し、分裂酵母dps1破壊株とdlp1破壊株において発現させたところ、最少培地上での相補が見られ、UQ-9の生成が確認できた。これらの結果より、Arabidopsis thaliana由来のソラネシル二リン酸合成酵素をコードする遺伝子はそれぞれ単独で機能していると考えられた。At-SPS1とAt-SPS2の細胞内局在を明らかにするため、各酵素をsGFPのN末端に連結した融合蛋白質発現プラスミドを構築し、タバコ細胞で発現させた。蛍光顕微鏡観察の結果、At-SPS1は小胞体に、At-SPS2は葉緑体に局在することがわかり、At-SPS1はユビキノン側鎖生合成に、At-SPS2はプラストキノン側鎖生合成に関与すると考えられた。これらの結果より植物では2種類の酵素がそれぞれ別のキノンの合成に働いていることを見いだした。
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