研究概要 |
蛍光不斉誘導体化試薬としてD-グルコサミン骨格を有する試薬を設計・合成した。これの試薬の不斉識別能を、アンテイソ型1級アルコールを用いて評価した。誘導体化はルイス酸を用いたグリコシル化反応により、糖の1位にβ選択的に導入することが可能であった。得られたジアステレオマー誘導体は、^1H-NMRにより、11位までの分岐不斉を、またHPLC法では、少なくとも16位までの分岐不斉を識別することが可能であった。特に、これらの試薬は長鎖の分岐脂肪酸に対する不斉識別が、我々が開発したアルコール誘導体化試薬磁trans-2-(2,3-アントラセンジカルボキシイミド)シクロヘキサンカルボン酸(1)に比較し格段に向上しており、更に多分岐アルコールに対しても高い不斉識別能を発揮した。一方、試薬1の酸クロリドを用いキラルアミン類を誘導体化し、その誘導体化に対するHPLCによる不斉識別能を評価した結果、R-CHNH_2-R'型アミン(R,R'=アルキル)、R"-(CHNH_2)-(CH_2)n-CHCH_3-CH_2CH_3型アミン(R"=H or アルキル)のいずれに対しても、アルコールと同様、非常に高い不斉識別能を示し、本試薬が、光学活性アミンに対しても適用可能であることを実証した。更に、その絶対配置に疑問の残る天然アルカロイドNipahtesin Dを文献既知の方法で合成し、本法による不斉分離を検討した結果、Nipahtesin Dの両鏡像体の誘導体をHPLCで分離し蛍光検出により約10pg程度の高感度で検出可能であることを明らかとした。更に、LC-MSへの適用を目指し、trans-2-(2-キノリンカルボキシアミド)シクロヘキサノールを設計合成し、従来試薬と同様に遠隔位不斉識別能を有することを確認し、LC-ESI-SRM法による選択的検出が可能であることを明らかとした。
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