研究課題
基盤研究(B)
アルツハイマー病は、42残基のアミロイドβペプチド(Aβ42)が、分子間β-sheet構造を形成して凝集する過程で、神経細胞毒性を示すことにより発症すると考えられている。本研究代表者らは、Aβ42の系統的なプロリン置換によって、Aβ42は22位および23位でターン構造をとり、15-21位および24-32位で分子間β-sheet構造を形成して凝集するという‘悪性コンホメーション'のモデルを提唱した。本研究では、凝集能ならびに神経細胞毒性が特に高いE22K-Aβ42(Italian変異体)に注目し、22位および23位の立体構造を固体NMRによって解析した。まず21-24位のアミノ酸残基を、^<13>C、^<15>Nで部位特異的に標識したE22K-Aβ42の凝集体を調製した。固体NMRによる測定は、本研究分担者の竹腰が開発した核間距離測定法(^<13>C-^1H dipolar-assisted rotational resonance法)を用いた。Mixing time 20msの測定により、全炭素原子のシグナルを帰属したところ、Asp-23のシグナルのみ2種類観測され、2つのコンホマーの存在が判明した。さらにmixing time 500msの測定により、マイナーコンホマーの22-Lysのγ-,δ-炭素および23-Aspのγ-炭素間に顕著なシグナルが認められ、22位および23位でターン構造をとっている可能性が強く示唆された。一方、野生型Aβ42についても同様の実験を行った結果、22-Gluおよび23-Aspの側鎖間にシグナルは認められなかった。これより、野生型Aβ42はItalian変異体とは異なり、通常22位および23位ではターン構造をとっていない可能性が示唆され、その結果、野生型の凝集能ならびに神経細胞毒性がItalian変異体と比べて低いものと考えられた。
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