研究概要 |
食事による動脈硬化の予防や抑制には、血清コレステロール濃度の低下、血管壁における炎症反応の抑制、酸化ストレスの抑制等が重要であると考えられている。本研究では、動脈硬化予防食品の設計に必要な情報を得る目的で、食事脂肪の種類が動脈硬化の発症に及ぼす影響とその機作について調査することとした。 まず、アポE欠損マウスに10%リノール酸あるいは飽和脂肪酸に富む食事を与えた。9週間後に調べた大動脈根の動脈硬化病変の程度はリノール酸食で飽和脂肪酸食と比較して軽度であった。前者で後者の食事と比較して、血清コレステロール濃度は低かったが、炎症反応の指標である動脈壁におけるMCP-1mRNA発現量と生体内酸化ストレスの指標である2,3-dinor-5,6-dihydro-8-iso-PGF2・の尿中排泄量は大であった。これらの結果から、動脈硬化の発症には血清コレステロール濃度が深く関わっていると考えられた。このことを確認するために、次に、リノール酸食に0,04%コレステロールを添加した食事区を設けて、アポE欠損マウスを9週間飼育した。コレステロールの添加によって血清コレステロールの濃度は増加し、動脈硬化病変の程度は増加した。動脈壁のMCP-1mRNA発現量と生体内酸化ストレスの指標である2,3-dinor-5,6-dihydro-8-iso-PGF2・の尿中排泄量に対するコレステロール添加の影響は大きくはなかった。これらの結果から、血清コレステロール濃度は動脈硬化病変の発症・進展に大きな影響を与える要因であることが明らかとなった。
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