研究概要 |
一部の腸内細菌やプロバイオティクスなどの共生可能な微生物の中には,宿主の免疫系の活性化やアレルギー反応抑制などの免疫調節作用が期待されている.しかし,それらの免疫調節作用の詳細は不明であり,本研究はその免疫学的な作用機序を分子生物学的な視点で明らかにし,感染防御やアレルギー発症の予防・治療のための基礎的な知見を得ることを目的とした.無菌の卵白オボアルブミン(OVA)特異的T細胞受容体トランスジェニックマウスをContとBifの2群に分け,Bif群にのみBifidobacterium pseudocatenulatum 7041(Bp)を定着させた.その1週間後,セグメント細菌(SFB)とClostridium 46株を両群に定着させた.これらのマウスに10%卵白含有飼料をそれぞれ1週間自由摂取させた後,パイエル板細胞(PP)を採取,調製し,OVAと共培養したときの上清中のサイトカイン産生応答,PPのCD4^+T細胞表面フェノタイプの解析を行った.その結果,PP細胞のBif群のIFN-γ,IL-6産生が低値を示し,これらBif群のOVA特異的サイトカイン応答パターンは無菌マウスに比べて,コンベンショナルマウスに類似していた.また,卵白含有飼料摂取時のBIF群のCD4^+T細胞中の感作型の細胞フェノタイプ(CD62L^<low>)を発現する細胞の割合がCont群に比べて高い特徴を示した. 以上より,Bpの定着は食品抗原に対するパイエル板細胞の過剰なサイトカイン産生を抑制し,腸管免疫応答を調節することが明らかとなり,プロバイオティクスとしてのBpが未発達な免疫系をコンベンショナルマウス型の免疫応答に変化させることが示唆された.さらに本実験系をマウス腸内細菌に対して応用することにより,宿主免疫系の応答に対する腸内細菌の調節作用について,細菌特異性を明らかにすることができると考えられる.
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