CLA(共役リノール酸)と魚油が雄ICRマウスの脂質代謝に与える相互作用を調べた。CLAは肝臓TG量を約7倍に増加させた。魚油同時添加は用量依存的に肝臓TG量を低下させ、3〜6%添加で対照群のレベルにまで減少した。CLAは睾丸と腎臓周辺脂肪組織脂重量を対照群の25及び14%にまで低下させた。魚油の同時添加は用量依存的に脂肪組織重量を増加させ、6%添加で、両脂肪組織脂重量は対照群の64及び37%にまで回復した。CLA無添加群で肪酸合成系酵素の活性・mRNA量とSREBP-1cのmRNA量は6%魚油添加により低下した。これらの値はCLAにより大きく増加し(1.5〜3倍)、魚油の同時投与により用量依存的に減少した。3%添加で、値はほぼ対照群の値にまで低下した。脂肪組織に高発現する数多くの遺伝子の発現はCLAにより大きく減少したが(70〜80%の低下)、魚油の同時添加により上昇し、6%添加で対照群の25〜110%にまで増加した。血清のレプチンとアディポネクチン濃度はCLAにより大きく減少したが、魚油の同時添加により上昇し、6%添加では対照群と差が見られなかった。血清インスリン濃度はCLAにより対照群の約4倍に増加し、魚油1.5%同時添加でさらに(約9倍)増加したが、魚油添加量増加と共に減少に転じ、6%同時添加で対照群の値にまで減少した。血清グルコース濃度はインスリン濃度と平行した変化を示した。以上の結果から、魚油はCLAによる脂肪肝の発生およびインスリン耐性を緩和する機能があることが明らかとなった。大豆リン脂質も、CLA摂取による肝臓脂肪酸合成昂進抑制と肝臓への脂肪蓄積の防止に有効であったが、高インスリン血症を防止する生理作用はなかった。
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